2008年6月11日水曜日

「あぁ、阪神タイガースー負ける理由、勝つ理由」 野村克也 角川ONEテーマ21新書


月曜日の出張帰りの新幹線の中、品川で買って京都で読みきってしまった。最近のナイトゲーム終了後のこの監督の一言が面白くて、野球のある日はほぼ毎日、ニュースバラエティみたいな番組のプロ野球情報にチャンネルを合わしてしまうのであるが、そう言えば過去には我がタイガースの監督もやっていたことを思い出した。3年やった結果、その結果が出ずに辞めてしまった記憶しかなかったのだが、この人独特の皮肉を交えてタイガースとその特異な組織体質を滅多切りに切っているのが面白い。旧くは別当、藤村、吉田に鎌田、土井垣、村山、小山、江夏に田淵、掛布に岡田等々、歴代のスター選手のこともこの皮肉屋の眼で冷静に書いている。この人に言わせればタイガースにはその永遠のライバルたる巨人に比してベストナインに選ばれるほどの人材は薄い(と言うか無い)とこき下ろしている。それだけ永遠のライバル巨人の将来を見据えた組織としての野球、ひいてはこの国の野球界の先駆としての使命感さえ感じさせる組織としての野球の「やり方」に対して、ただの地域的な対抗心から来る阪神の野球は目前の利益に血眼になって、全体としての利益や組織としての利益を考えられない大阪商人の特質が出たその場限りの野球であり、選手も何も考えずただバットを振るだけ、投げるだけの癖に周囲からもてはやされて図に乗っている。このチームはただ単にマスコミや盲信的なファン層に助けられているだけだとこき下ろす様は、タイガースファンには賛否両論分かれるところだと思う。けど、ここで言われる事は正に本当の事だが、このチームのファンを長くやっているとそんな事はとっくに解っているワケだ。人間のやる事やし、そんな組織やからたった数年前までは歴史だけは長いが大して強くも無いチームだったわけやし、だから負けてたんやもん。野村の言うことは正論、けど正論が受け入れられない世界もあるわけで、それが人間の世界なんじゃなかろうかと思う。野村の言う様に、最近は常勝チームとして無難な普通のチームになりつつあるが、今までのタイガースなんて組織としては誠に欠陥だらけのチームだったと思う。けど、それでも旧くからのファンが離れなかったのは地域的な特性にぴったり当て嵌まっていたからだと思う。関西みたいな良くも悪くも本音の世界で、混沌として、冷静よりは情熱と言った或る意味非常に人間臭い、泥臭い、或る意味非常に灰汁が強くて、所謂ダサい地域性だからこそ愛されたチームであると思うし、それを誰も格好悪いこととも思っていない。果たして、プロ野球チームとしての常識、テーゼとしての巨人の様な糞マジメで強い球団がこの地域に居たら、果たしてこれだけボロカスこけ下ろしながら応援されたのだろうか?と思ってしまう。正論は大いに結構だが、セオリー通りに行かないのが人間の組織であり気持ちで無いのかなとも思う。まぁそうは言っても、最近のタイガースの人気度の高さは旧くからのファンにとってはあまり手放しに喜べる風潮では無いのも事実。もっとゲーム本来を楽しんだ方が野球は長く楽しめると思いますがね、、、。