2010年11月20日土曜日

「幕末史」 半藤一利 新潮社


今年の国営放送の大河ドラマは大当たりだ。

その「龍馬伝」もあと二回で本放送を終了するらしい。

かく言う私も「龍馬伝」は今年の初めから飽きずに見ている。

新しい世を作るという信念に従って何事も諦めない前向きな姿勢、他人と出会い、教えを乞い、考えを問い、そしてその経験を自身で昇華し成長していく姿が、毎日同じ様な生活にいい加減うんざりして閉塞感に打ちひしがれているこの国の住民にとっては羨ましくもあり、そんな姿が人気を博しているのだろう。

恐らく最終回、志半ばにして同志中岡慎太郎と「近江屋」で刺客によって夢を断たれる場面で物語はTheEndなのだろうが、、、、果たして龍馬亡き後、残った薩長土の志士達が彼の思い描いた新たな国家像を作れたかと言えば答えはNo!なのである。

既に放っておいてもやがて滅びるのが眼に見えていた徳川幕府ではあったが、一方の新政府で国家ビジョンを持った輩が果たして何人いたかと言えば、実は誰もいなかった。ただ「勝てば官軍」の状態でしかなかったのであると半藤一利は言う。
その中で同志江藤を斬り、西郷を嵌め、一人権力を欲しい侭にしたのが大久保利通であり、やがて太平洋戦争での敗戦まで連綿と繋がる薩長中心の近代日本の国家体制を作って来た元凶であるともいえる。
因みに旧体制を倒して政権についたものの国家ビジョンが無く迷走したと言う様子は、今も昔もあまり変わらない様だ。
後世の歴史家に「終末史」なんて書かれなければ良いのだが・・・。